本研究では、細胞内小胞輸送の特異性・選択性に働く代表的な制御分子Rabファミリー低分子量G蛋白質(Rab)に注目し、高次機能システムの維持や確立に必要な小胞輸送の制御機構について解析を行った。まず、高次神経機能については、その主要な調節分子のひとつであるRab3Aの活性制御蛋白質Rab3 GAPのノックアウトマウスの作製に成功し、現在、作製したマウスの神経の形態学的および機能学的解析を行っている。最近、Rab3 GAPがWarburg Micro syndromeという小頭症、精神遅滞を示す遺伝性疾患の原因遺伝子であることが報告され、Rab3 GAPの高次神経機における重要性が疾患レベルでも証明されており、私共のノックアウトマウスの個体レベルの解析が世界的にも注目されている。一方、本研究では、組織・器官形成を支える細胞接着分子の小胞輸送についても解析を行った。これまでに、上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)を構成する接着分子claudinがゴルジ体から細胞膜に運ばれる過程や今一つのTJ接着分子occludinが細胞膜から細胞内に取り込まれ、再び細胞膜へリサイクリングされる過程をRab13が制御することを明らかにしてきた。Rabのメンバーは各々が特異的な標的蛋白質を介して機能するが、本年度の本研究では、Rab13の標的蛋白質としてJRAB(a junctional Rab13 effector protein)を同定した(投稿中)。JRABは上皮細胞のTJ領域に局在し、Rab13と共に、TJ接着分子の輸送を制御することを示した。このように、本年度の研究は予想以上に進展し、当初の目的はほぼ達成できた。
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