私共は、接着分子ネクチンと、ネクチンをアクチン細胞骨格に連結するアクチン線維結合蛋白質アファディンから構成され、アドヘレンス・ジャンクション(AJ)に局在する細胞間接着機構を見出している。また私共は、ネクチン-アファディン系がまず細胞間接着を形成し、そこにカドヘリン-カテニン系やクローディン-ZO-1系をリクルートし、AJとタイト・ジャンクションのオーガナイザーとして機能していることを明らかにしている。本年度の本研究において、ネクチン-アファディン系について解析し、以下の成果を得た。 1.胎生期において、ネクチン-アファディン系は神経上皮、体節等の極性をもった上皮細胞のAJに局在していた。一般的な円柱上皮においてネクチン-2の発現は器官形成を通じて維持されていたが、一方、ネクチン-1と-3は神経組織の発生にともなって同組織に高度に濃縮されるようになった。さらにネクチン-1は、皮膚のケラチノサイト、毛嚢、歯の上皮に高く発現していた。これらのことより、ネクチン-アファディン系は胎生期の上皮構造再構築に関わっていることが示唆された。 2.胎生期の中枢神経系において、ネクチン-1と-3が交連性ニューロンとフロアープレート細胞の接着部位に局在していた。このネクチン-1と-3のトランス結合を阻害すると、交連性ニューロンが異常な走行を示した。これらのことより、ネクチン-1と-3のトランス結合は、交連性ニューロンとフロアープレート細胞の接着に関与し、交連性ニューロンの走行を制御していることが明らかとなった。 このように、本年度の本研究は予想以上に進展し、当初の目的をほぼ達成することができた。
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