ミッドカインを分子標的とした悪性腫瘍と炎症性疾患の治療法開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390103
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 村松 喬 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00030891)
• 研究分担者: 村松 壽子 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50182134) ; 門松 健治 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80204519)
• キーワード: ミッドカイン / リウマチ / アルツハイマー病 / 抗がん剤 / 新生内膜形成 / 炎症性細胞 / 癒着 / マクロファージ

研究概要

ミッドカインアンチセンスオリゴDNAを用いて、マウスの虚血性腎障害、そしてウサギでの血管損傷時の新生内膜形成をいずれも有意に低下させることに成功した。抗がん剤シスプラチン投与時の腎障害にもミッドカインが関与することを、ミッドカイン遺伝子ノックアウトマウスを用いて証明した。血清ミッドカイン値がアルツハイマー病患者、そして統合失調症患者の約50%において正常値より上昇し、ミッドカインとこれらの病因との関連が示唆された。ミッドカイン遺伝子ノックアウトマウスでは肝切除後の腸管癒着が有意に低下していた。このことをより定量的に調べるため、腹壁に傷をつけ、そこへ大網の癒着を測定するアッセイ系を開発した。このアッセイ系を用いて、ミッドカイン遺伝子ノックアウトマウスでは、癒着が大きく低下すること、そしてミッドカインを補給すると癒着が高度になることを確認した。癒着防止のターゲットとしてミッドカインが浮かび上がったことになる。ノックアウトマウスでは大網へのマクロファージと好中球の移動が抑えられていた。ミッドカイン遺伝子ノックアウトマウスでは、抗II型コラーゲン抗体による関節炎の発症が大きく抑えられていた。この関節炎はリウマチのモデルとなり、リウマチの発症へのミッドカインの関与が示唆された。リウマチ性関節炎患者の滑膜からマクロファージを単離し、これをミッドカインと共に培養すると破骨細胞の分化が促進された。ミッドカインは炎症性細胞の移動と共に破骨細胞の分化誘導にも関与し、この両面でリウマチの発症にかかわると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Ikematsu, S.: "High levels of urinary midkine in various cancer patients"Biochem.Biophys.Res.Commun.. 306. 329-332 (2003)
• [文献書誌] Shimizu, E.: "Two clusters of serum midkine levels in drug-naive patients with schizophrenia"Neurosci.Lett.. 344. 95-98 (2003)
• [文献書誌] Ikematsu, S.: "Correlation of elevated level of blood midkine with poor prognostic factors of human neuroblastomas"Br.J.Cancer. 88. 1522-1526 (2003)
• [文献書誌] Tomizawa, M.: "A promoter region of the midkine gene that is frequently expressed in human hapatocellular carcinoma can activate a suicide gene as effectively as the α-fetoprotein promoter"Br.J.Cancer. 89. 1086-1090 (2003)
• [文献書誌] Maruyama, K.: "Midkine, a heparin-binding growth factor, is fundamentally involved in pathogenesis of rheumatoid arthritis"Arthritis Rheum.. (印刷中).
• [文献書誌] Inoh, K.: "Midkine, a heparin-binding cytokine, plays key roles in intraperitonal adhesions"Biochem.Biophys.Res.Commun.. (印刷中).