研究概要 |
肝内胆管上皮は胆汁中に含まれる胆汁酸、解毒代謝産物に加え、細菌成分であるリポポリサッカライド(LPS)やリポタイコ酸(LTA)などの起炎性物質に常時暴露されているが、生理的状態では胆管系に炎症は生じない。最近の腸管での研究で、菌体成分に対するシグナルレセプターであるToll-like receptor(TLR)が腸管上皮の細胞表面に分布し、これが炎症性サイトカインの産生や腸管の細菌成分に対する炎症の制御に関係していることが明らかとなっている。本研究では、菌体成分に対する胆管系の炎症制御機構とその異常を菌体成分のシグナルレセプターであるTLRの関与を中心に検討し、炎症性胆管系疾患におけるTLRの病的役割を明らかにすることが目的である。今年度の研究で以下の事が明かとなった。 1.ヒト肝内胆管癌培養株およびマウス培養肝内胆管上皮初代培養株を用い、TLR1〜10とその関連分子(MD-1,-2,MyD88など)の発現を蛋白レベル、およびmRNAレベルで検討した。胆管上皮には、TLR2,TLR4,さらにMD-2、MyD88の発現があり、さらに菌体成分(リポポリサッカライド、リポタイコ酸)、IL-1β、TNF-αの添加により活性化し、NF-κBの活性化、さらには炎症性サイトカインのup-regulationがみられた。 2.ヒト正常肝および病的な胆管系でのTLR1〜10とその関連分子の分布と発現を蛋白レベルとmRNAレベルで検討した。正常肝では、肝内胆管上皮においてTLR2,TLR4の発現がみられた。さらに炎症性の胆道系疾患では、これらのTLRの発現が亢進していた。TLRが、ヒト胆管系での病態に深く関係することが示された。
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