研究概要 |
ATLの発症におけるIRF-4の関与について検討をした結果、IRF-4の発現の増加している症例と急性転化症例に高い相関があること、慢性型と診断されIRF-4の発現が高かった症例で数ヵ月後に急性転化が起こっていることが明らかとなり、また試験管内実験系での細胞周期における検討からT細胞に分裂刺激が加えられた場合、IRF-4の発現上昇がS期に先駆けて起こること、IRF4の導入された細胞でS/M期への移行が増加することが証明された。この研究では、T細胞におけるIRF-4の下流遺伝子の同定とその作用機序の解明を目指してin vitro, in vivo(IRF-4欠損マウス)の両面から行い以下の結果を得た。 1.IRF-4のATL細胞における増殖における役割を、IRF-4が恒常的に発現している樹立細胞株Hut102細胞を用いておこなった。IRF-4特異的siRNAによってその発現を抑制することを試みたが現時点では全く抑制がみられない。 2.IRF-4下流遺伝子探索のために遺伝子欠損マウスリンパ球に、抗原刺激を加え、得られたRNAサンプルを標識してメンブランアレイによる解析を行い、野生型とIRF4遺伝子欠損マウス間で発現量に差異のある遺伝子の同定を試みた結果、IRF-4遺伝子欠損マウスにおいてはEBI-1/CCR7の発現の抑制が見られた。この結果は、われわれがすでにIRF-4の発現の亢進したATLにおいてEBI-1/CCR7の発現が亢進しているとする報告と表裏一体をなすものであり、はたしてIRF-4の下流にEBI-1/CCR7が位置するのかを検討中である。 3.IRF-4の標的配列決定のためPCRに基づいた至適配列決定を行った。その結果、IRF-4は5'-GAAA-3'のコア配列の前後にCpCが付加した配列を好むことが解った。これに近い配列をプロモーター上に持つ遺伝子について現在、解析中である。
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