研究概要 |
家族集積性胃癌を分子病理学的、および、分子疫学的に検討し次のことを明らかにした。 1.本邦の家族性胃がんで、CDH1遺伝子の生殖細胞系列のミスセンス変異を見いだした。 2.酸化的DNA障害の修復酵素OGG1多型が、食事などによる胃がん、食道がんのリスクを修飾することをみいだした。 3.胃癌にみられる染色体不安定性の検出方法を開発し、それによって、家族性胃癌や、組織学的に特徴のある胃がんの一部に、染色体安定性(near diploid)のものがあることをしめした。 4.NEIL1,MYHといった、酸化的DNA障害修復酵素が、胃癌において、体細胞変異をおこしたり、あるいは、機能差のある多型が胃がん集積家系でみつかることがあった。MYHにみられた機能多型は明確な局在の変化を伴うものであった。 5.Peutz-Jeghers症候群に発生した胃癌家系で、そのLKB1の生殖細胞系列変異を見いだした。 6.Eph familyのなかには、前立腺癌や、大腸癌、大腸の過形成ポリープ症の責任遺伝子であるものがあるが、EphB2が大腸癌の発生に抑制的に働くような動態をしめし、胃癌とはことなること、さらにEphA2とそのリガンドEFNA1が胃癌では相補的に発現ひ、リガンドEFNA1の投与でin vitroでEPHA2高発現胃癌株の増殖が抑制されることを見いだした。EPH familyはTiam1のようなシグナル分子と結合することがあり、後者は罹患同胞対研究で見いだされた関連遺伝子部位にある遺伝子である。 7.さらに家族性胃癌家系の生殖細胞系列を探索して、p53のあらたな機能変異を見いだし、機能解析をおこなっている。 8.KLK12のスプライス多型を見いだし、胃がんでの発現の変化を見いだした。
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