研究課題/領域番号 |
15390127
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大島 正伸 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40324610)
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研究分担者 |
大島 浩子 京都大学, 医学研究科, 研究員(科学技術振興)(常勤形態) (80362515)
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キーワード | 胃癌 / COX-2 / mPGES-1 / 炎症 / マクロファージ / PGE_2 / ヘリコバクター / トランスジェニックマウス |
研究概要 |
プロスタグランジン合成酵素のCOX-2はアラキドン酸を基質としてPGH_2を合成し、さらに変換酵素のmPGES-1によりPGE_2へ変換される。腫瘍組織では双方の発現誘導が認められ、PGE_2産生が亢進している。また、COX-2活性阻害が腫瘍発生を抑制するので、COX-2/mPGES-1経路が腫瘍形成に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、COX-2とmPGES-1を胃粘膜上皮で発現するトランスジェニックマウス(K19-C2mE)を作製し、上皮細胞の分化増殖における影響を解析している。K19-C2mEマウス腺胃の上皮細胞は過形性変化を生じ、12週齢以降に腫瘍性病変を発生する。COX-2選択的阻害薬NS398投与によりこの病変は消失する。また、K19-C2mEマウスの胃粘膜下組織には炎症性細胞浸潤が認められたが、セフォペラゾンとストレプトマイシンの抗生物質投与により、胃内常在菌を検出限界以下にすると炎症性細胞浸潤が抑えられた。このとき、粘膜過形性も抑制されたので、細菌感染に起因した炎症反応が胃の上皮細胞増殖に重要であることが明らかになった。また、K19-C2mEマウスの胃粘膜間質には強い活性化マクロファージ浸潤が認められた。NS398投与によりマクロファージ浸潤は抑制され、抗生物質投与ではマクロファージ数に変化はなかったが、TNF-α発現などのマクロファージ活性化は抑制された。したがって、COX-2/mPGES-1の発現誘導は粘膜マクロファージ集簇に直接重要であり、これが細菌感染により活性化して、炎症反応が惹起されることが上皮細胞増殖の原因と考えられた。さらに胃癌発生の危険因子であるHelicobacterを感染(H.felis)せた野生型マウスの胃粘膜でもCOX-2とmPGES-1の発現が誘導されることも明らかにした。現在、さらに詳細な分子機序を解析している。
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