研究概要 |
1.インスリンシグナル分子の解析:カロリー制限(calorie restriction, CR)、GH-IGF-1抑制ラットの肝臓、骨格筋におけるインスリンシグナルの解析から、カロリー制限によって、糖代謝におけるインスリン感受性の増加とともにインスリン非依存性経路の活性化が起きること、これには、GH-IGF-1系の抑制が関連していることを示唆した(Yamaza H et al., Exp Gerontol 2004;林洋子、他、基礎老化研究、2005)。インスリン非依存性シグナル経路としてadiponectin-AMP-activated protein kinase(AMPK)の関与を検討したが、予測に反して、AMPKはカロリー制限によって抑制されていること、GH-IGF-1系の抑制はAMPK経路に影響を及ぼさないことを明らかにした。 2.ストレス応答:カロリー制限ラットにおける炎症性ストレス誘導後の遺伝子発現解析によって、カロリー制限はストレス耐性であること、この耐性は、NF kappa Bに誘導される遺伝子よりも、constitutiveに発現制御される遺伝子産物により生じている可能性を示唆した(Tsuchiya T et al., Mech Ageing Develop, 2005)。GH-IGF-1抑制ラットはCRラットよりもさらに強い炎症ストレス耐性を示した。これにはNF kappa Bによる炎症性サイトカイン発現の制御も関与していることが示唆された。現在、NF kappa B以外のRedox感受性転写因子やシグナル伝達系を解析している。 3.ミトコンドリアにおける酸化ストレス:還元型、酸化型グルタチオンの定量などにより、GH-IGF-1系を強度に抑制したラットでは、酸化的ストレスが増加し、腫瘍発生頻度の増加、寿命の短縮が起こることを明らかにした。
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