癌細胞由来サイトカインによる癌の宿主免疫系からの逸脱機構に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390130
• 研究機関: 奈良県立医科大学
• 研究代表者: 國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
• キーワード: RAGE / アンフォテリン / マクロファージ / アポトーシス / JNK / 大腸癌 / 癌免疫

研究概要

癌の発生進展において、宿主免疫による腫瘍抑制からの逸脱が、重要な役割を果たしていることが広く認められているが、われわれは癌細胞の免疫逸脱機構におけるRAGE-amphoterin系の関与を検討した。
ヒト大腸癌ではマクロファージの腫瘍内浸潤が抑制されており、癌のアンフォテリン陽性率と相関していた。ヌードマウス同所移植ヒト大腸癌細胞では、高転移株ではマクロファージの腫瘍内浸潤抑制とアンフォテリン高発現・分泌が見られたが、低転移性親株では低かった。アンフォテリンまたはアンフォテリンを含む大腸癌細胞培養上清をRMAにより分化誘導したU937単球細胞を処理すると、分化によりRAGE発現の誘導されたU937細胞にアポトーシスが生じ、浸潤能も抑制された。ラット腹腔内マクロファージにアンフォテリンを処理しても同様にアポトーシスの誘導が認められた。アンフォテリン処理によりpRac1レベルの上昇とともにpJNK上昇が見られアポトーシス誘導経路の可能性が考えられた。
Bcl-2・Bax発現、pAKTレベルに著変は見られなかった。また、L-NAME処理ではPMA分化誘導U937細胞のアンフォテリン誘導マクロファージアポトーシスは抑制されなかったが、LPS,IFN-γにより活性化した場合、アポトーシスは促進された。さらに、PMA分化誘導U937細胞にアンフォテリンと同時にEGFを処理するとアポトーシスは促進され、大腸癌組織中における高アンフォテリン・高EGF微小環境がマクロファージの腫瘍内浸潤を阻害しえいると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Kuniyasu H 他2名: "Differential effects between amphoterin and advanced glycation end products on colon cancer cells"International Journal of Cancer. 104(6). 722-727 (2003)
• [文献書誌] Kuniyasu H 他6名: "Interleukin-15 by human colon cancer cells is associated with induction of mucosal hyperplasia, angiogenesis, and metastasis"Clinical Cancer Research. 9(13). 4802-4810 (2003)
• [文献書誌] Kuniyasu H 他3名: "Helicobactor pylori infection is closely associated with telomere reduction in gastric mucosa"Oncology. 65(3). 275-282 (2003)
• [文献書誌] Kuniyasu H 他2名: "Co-expression of receptor for advanced glycation end products and the ligand amphoterin associates closely with metastasis of colorectal cancer."Oncology Reports. 10(2). 445-448 (2003)
• [文献書誌] Kuniyasu H 他4名: "Amphoterin induction in prostatic stromal cells by androgen deprivation is associated with metastatic prostate cancer"Oncology Reports. 10(6). 1863-1868 (2003)
• [文献書誌] Kuniyasu H 他2名: "A role of histone H4 hypoacetylation in vascular endothlial growth factor expression in colon mucosa adjacent to implanted cancer in athymic mice cecum"Pathobiology. 70(6). 348-352 (2003)