癌の発生進展において、宿主免疫による腫瘍抑制からの逸脱が重要な役割を果たしている。われわれは癌細胞の免疫逸脱機構におけるRAGE-HMGB1/amphoterin系の関与を検討した。その結果RAGE-HMGB1/amphotedrin系がマクロファージにアポトーシスをもたらし宿主癌免疫から逸脱しより高い転移能を獲得することが示唆された。すなわち、1.転移を有する大腸癌のほぼ全例でHMGB1/amphoterinの過剰発現が見られた。2.活性化マクロファージではRAGE発現が亢進した。3.HMGB1/amphoterin処理によりマクロファージにアポトーシスが誘導された。4.EGF存在下でHMGB1/amphoterinによるアポトーシス誘導が促進された。さらに、5.ヒトリコンビナントHMGB1/amphoterinを作成し、健常人から採取したヒト肺胞マクロファージ及びラット腹腔マクロファージを処理しアポトーシスの誘導を確認した。6.ヌードマウス皮下腫瘍系においてHMGB1/amphoterin中和抗体を腫瘍内投与すると腫瘍内へのマクロファージ浸潤が促進された。7.ラットAOM大腸発癌モデルでは発癌早期からHMGB1/amphoterin分泌の亢進が大腸粘膜に見られ、発癌早期から宿主癌免疫からの逸脱機構が関与する可能性が示唆された。8.HMGB1/amphoterinによるマクロファージへのアポトーシス誘導が癌以外の病態に関与する例として、肝線維化を検討したところ、四塩化炭素投与ラット肝においては血清中HMGB1/amphoterinの上昇と肝壊死組織内マクロファージにアポトーシスが見られ肝障害の増悪にHMGB1/amphoterinによるマクロファージアポトーシス誘導が関与することが示唆された。以上から、HMGB1/amphoterinの癌宿主癌免疫からの逸脱作用は癌治療の重要な標的となると考えられた。
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