免疫系細胞の一種「CD4T細胞」は、老化に伴い著しい低応答性状態に陥る傾向にある。我々は、老齢マウス由来CD4T細胞を単一集団として捉えるのではなく、2種類のマーカーを用いることにより、老齢マウス由来CD4T細胞を3つの機能的集団に分け得ることを示した。即ち、若齢時と同程度の機能を維持している集団、著しい低応答性状態に陥っている集団、そして若齢時には存在しなかった免疫抑制性CD4T細胞集団である。更に、この老齢時特有の免疫抑制性CD4T細胞の抑制機能を阻害する抗体を樹立し、抗体の認識分子はCD45分子であることを明らかにした。 上記抗体は、免疫抑制性CD4T細胞の抑制機能を阻害するのみならず、正常CD4T細胞の活性化を増強する作用のあることが明らかになった。抗体の存在により、通常より長期に渡りIL-2mRNAの転写が誘導され、結果的に大量のIL-2蛋白が産生されていることが明らかになった。CD45分子からIL-2の産生に繋がる分子の同定を試みている。 また若齢マウスを抗原で免疫する際、上記抗体を同時に投与するとその後の免疫誘導効率が格段に上昇することが明らかになった。一方、老齢マウスにおいては同様の免疫操作および抗体の併用においても、全く抗原に対する免疫応答が誘導されていなかった。固体レベルでの老齢時の免疫応答の低下を改善できる抗体の樹立を検討している。
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