研究課題/領域番号 |
15390138
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
青木 孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (20053283)
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研究分担者 |
嶋田 淳子 順天堂大学, 医学部, 講師 (20211964)
奈良 武司 順天堂大学, 医学部, 講師 (40276473)
吉田 彩子 順天堂大学, 医学部, 助手 (20343486)
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キーワード | Trypanosoma cruzi / Fasシグナル伝達系 / アポトーシス抑制 / c-FLIP / ピリミジン生合成酵素 / 原虫-宿主タンパク質相互作用 / ファージデイスプレイ |
研究概要 |
Trypanosoma cruzi感染細胞ではFasを含むdeath receptorsを介するアポトーシスが抑制される。我々はこの発見に引き続き、T.cruzi感染および非感染細胞を比較したところ、同アポトーシスの最上流ステップを強く阻害する宿主因子cellular FLIP(c-FLIP)が感染細胞において著しく上昇していた。感染マウス心筋細胞(in vivo)においてもc-FLIP蛋白質の上昇を認めた。RNA干渉法によってc-FHPをノックダウンすると、抑制された感染細胞のアポトーシスは非感染細胞のレベルまで回復した。以上より、T.cruziは生き残りのために宿主因子c-FLIPを利用して感染細胞のアポトーシスを抑制することが明らかとなった。 このように生存を保障されたT.cruziは細胞内で増殖(=病原性を発揮)し、増殖の基盤として特異なピリミジン合成遺伝子クラスター(6個の遺伝子が連なる)を持つ。我々は本クラスターの意義・起源について調べ、自由生活性キネトプラスチダBodo面にも同様のクラスターを見出した。したがって本クラスターはT.cruziとBodoの共通祖先キネトプラスチダにおいて既に確立していたことが分かった。第4酵素の嫌気適応における役割についても重要な知見が得られ、また驚くべきことにキネトプラスチダの第6/第5融合遺伝子は数種のシアノバクテリアに水平転移していた。 細胞内型T.cruzi抗原を用い、ヒト心筋タンパク質(cDNA由来)を多数発現しているファージディスプレイをスクリーニングし、陽性ファージクローンを単離した。その内特にmRNAの転写調節やRNAプロセッシングに関与するSAF-B(scaffold attachment factor B)に着目し、組換えSAF-BをプローブとしてT.cruziがタンパク質ファージディスプレイをスクリーニングした。その結果、いくつかの興味深い原虫タンパク質を認め、現在、同原虫のゲノムデータベース等を利用してそれらの解析を進めている。以上のように感染宿主細胞を修飾し支配するトリパノソーマの分子戦略の研究は3方面から多くの成果を得た。
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