研究課題
基盤研究(B)
Trypanosoma cruzi感染細胞ではFasを含むdeath receptorsを介するアポトーシスが抑制される。我々はこの発見に引き続き、T.cruzi感染および非感染細胞を比較したところ、同アポトーシスの最上流ステップを強く阻害する宿主因子cellular FLIP(c-FLIP)が感染細胞において著しく上昇していた。感染マウス心筋細胞(in vivo)においてもc-FLIP蛋白質の上昇を認めた。RNA干渉法によってc-FLIPをノックダウンすると、抑制された感染細胞のアポトーシスは非感染細胞のレベルまで回復した。以上より、T.cruziは生き残りのために宿主因子c-FLIPを利用して感染細胞のアポトーシスを抑制することが明らかとなった。このように生存を保障されたT.cruziは細胞内で増殖(=病原性を発揮)し、増殖の基盤として特異なピリミジン合成遺伝子クラスター(6個の遺伝子が連なる)を持つ。その内、第4酵素(DHOD)の遺伝子欠損原虫株を作成・解析し、本酵素はT.cruziにとって必須であることを示した。トリパノソーマ類のDHODはオロト酸生成の他にフマル酸還元活性を合わせ持つことから、ピリミジン生合成のみならず、原虫細胞内のレドックスバランスを保つ上で必須の役割を担っていることが明らかとなった。また、DHODの分子進化に焦点を当てて解析したところ、トリパノソーマ類のDHODは、自由生活性のキネトプラスチダ類の祖先生物ですでに獲得されていたことが示された。同時に、トリパノソーマに近縁のボド原虫から新規融合酵素遺伝子(第2酵素遺伝子-第4酵素遺伝子)のクローニングに成功した。さらに、DHOD遺伝子の水平転移と寄生成立の関連について考察し、細胞質型DHOD遺伝子を獲得し嫌気的環境へ適応したことが、寄生成立のための前適応となったという、興味深い仮説を提唱することができた。以上より、本DHODの不可欠性からトリパノソーマ症治療薬開発の標的としても有望であることが示された。
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