研究課題
炭疽は炭疽菌Bacillus anthracisによる人獣共通感染症で、炭疽菌は低温や乾燥などのストレスに曝されると極めて耐久性の高い芽胞を形成し、長期にわたり外界にて病原性を保持することができる。そのため、炭疽菌芽胞は生物兵器としても古くから脅威の的であったが、近年バイオテロに使用され死傷者を出したことは記憶に新しい。生体内に侵入した炭疽菌の芽胞は、マクロファージに貪食されると細胞内で発芽し、毒素産生と莢膜形成を行う。毒素はマクロファージを溶解し、血流中へと放出された炭疽菌は、爆発的な増殖および毒素産生により最終的に宿主を死に至らしめる。感染後短時間の経過を辿るため、抗生物質による治療は感染初期にのみ有効で、発症後では効果が低い。また、ヒトの炭疽ワクチンは強い副作用や長い接種期間などの問題点があり一般人には使用されていない。そのため、炭疽菌の感染機構を解析し、治療やより安全で有用なワクチン開発に役立てることは重要である。本年度、我々は病原性を持たない変異型炭疽菌芽胞を調整し、免疫動物から得られた抗血清より抗体を精製し、その効果についてマウス感染モデルを用いて検討した。その結果、この抗体が投与濃度依存的にマクロファージ内の炭疽芽胞の発芽を抑制し、マウスの死亡率を低下させ、生存期間および生存率を上げることを見出した。この結果は、免疫に用いた変異株がワクチン株として有用であることを示している。さらに、この抗体や変異株を利用したプロテオーム解析により幾つかの未知の病原因子候補が見つかった。今後、これらの因子を欠失させた炭疽菌を作製して野生株と比較検討することで感染機構の一端を明らかにするとともに、副作用の少ないワクチン開発の基盤となる研究を進めていく。
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