研究概要 |
緑膿菌は重篤な難治感染症を引き起こす日和見感染症の重要な起因菌のひとつである。本感染症の化学療法の問題点は、種々の抗菌薬や消毒薬に対する本菌の高度自然耐性を示すところにある。本研究の目的は、生育環境下の異物からの自己防衛に働くマルチコンポーネント型異物排出システム発現制御機構から多剤耐性および病原性の発現の機構を明らかにすることにある。緑膿菌の病原性(毒素産生、バイオフィルム形成や運動性)発揮など生理的機能に重要な役割を果たしているQuorum-sensing機構によるマルチコンポーネント型多剤排出システム(Mexシステム)の発現を調べたところ、MexCD-OprJ、MexJK, MexHI-OpmD、PA1435-PA1436、PA2528-PA2527-PA2526-PA2525およびCzcABCの発現がQuorum sensingによって制御されていることが分かった。また、マルチコンポーネント型排出システムの発現がQuorum sensing機構の発現にも機能していることが分かった。 私どもはすでに緑膿菌の排出システムが本菌の抗菌薬耐性に機能するのみならず、本菌の内因性感染の成立に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、本年度の研究によって、排出システムの発現がQuorum sensing機構によって制御されていること、また逆に排出システムがQuorum seinsing機構の発現にも機能していることが明らかとなった。これらの知見を総合すると、排出システムの阻害は抗菌薬耐性の軽減のみならず、緑膿菌の病原因子の産生を軽減させることにもつながり、新しい抗感染症薬創生への標的である可能性が示された。
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