研究課題/領域番号 |
15390148
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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研究分担者 |
辻 祥太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (30285192)
小野 悦郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (00160903)
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
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キーワード | ボルナ病ウイルス / 中枢神経系 / 持続感染 / 感染病態 / ウイルス病原性 |
研究概要 |
ウイルス性脳疾患の発症には神経細胞内での持続感染の成立が深く関わっていると考えられている。これまでの研究により、持続感染の成立には、ウイルス蛋白質の発現や転写レベルの調節、そしてウイルス抗原の変異が重要であることがわかっている。しかし、それらウイルス側の変化に関わる脳内での宿主因子や免疫活動の変化は明らかになっていない。また、持続感染を維持するために、ウイルスゲノムがどのような制御を受けて神経細胞内で長期に安定化しているのかもわかっていない。そこで本研究では、ボルナ病ウイルス(BDV)を利用して、ウイルスの持続感染成立を制御する脳内機構の詳細な働きとその発生のメカニズムを解明することを目的としている。BDVは、人を含む多くの脊椎動物に感染可能なRNAウイルスである。研究の初年度である本年度は、ラットを用いてBDVの持続感染モデルの作成を試みた。また、BDV感染に伴い変化するラット脳内でのサイトカインの動態、ならびにBDVのリン酸化(P)タンパク質との結合性が証明されている宿主因子HMGB1とその受容体であるRAGEの感染脳内での発現動態について詳細な解析をおこなった。その結果、生後24時間以内の新生仔ラットにBDVを頭蓋内接種することで、無症状に脳内でBDV持続感染を維持できる持続感染ラットの作成に成功した。また、HMGB1の脳内発現は、非感染ラットでは脳成熟に伴い徐々に低下していくのに対して、BDV感染ラットでは恒常的にその発現が上昇していることが明らかとなった。一方、RAGEの発現は、感染ラットにおいて顕著に減少することが示された。さらに、これら脳内分子の発現の変化は、感染に伴う脳内サイトカインの動態と関連していると考えられた。今後、持続感染の維持に関わるHMGB1とRAGEの役割について詳細に検討する必要があると考えられる。
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