研究概要 |
1.麻疹ウイルスの病原性におけるインターフェロン(IFN)抵抗性の役割を調べるために、麻疹ウイルス株間でIFN-αに対する抵抗性に差があるか検討した。IFN-α存在、非存在下に、IC-B野外株、Edmonston(Ed) ATCC株,Ed tag株をVero/hSLAM細胞に感染させ、48時間後のtiterを測定した。IC-B株はIFN-αの存在下でもほぼ同等のtiterを示したのに対し、Ed ATCC株は軽度低下し、Ed tag株は1万分の1以下のtiterしか示さなかった。 2.パラミクソウイルス科の多くのウイルスは、V蛋白やC蛋白によりIFNに抵抗する能力を持つ。麻疹ウイルスのV蛋白にも同様の活性があることが報告されている。IFNで誘導されるレポーター遺伝子の発現を指標にIFN抵抗性を検討したところ、IC-B株、Ed ATCC株のV蛋白はINF-αのシグナル伝達を阻害したが、Ed tag株のV蛋白は阻害しなかった。Ed ATCC株とEd tag株のV蛋白には3アミノ酸の違いがあるが、このうちの2個の置換が抗IFN活性を失うのに必要であった。 3.パラミクソウイルス科の多くのウイルスのV蛋白では、C末端領域が抗IFN活性に重要であることが示されている。V蛋白のキメラ分子、truncated分子、部位特異的変異導入分子を作製し、それらの抗IFN活性を調べることにより、麻疹ウイルスではV蛋白のN末端領域とC末端領域の両方が抗IFN活性にとって重要であることが示された。 4.それぞれの麻疹ウイルス株のC蛋白も軽度の抗IFN活性を示した。しかし、Ed ATCC株とEd tag株のC蛋白の配列は同一であり、両者のインターフェロン感受性の違いを説明できなかった。
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