研究概要 |
我々は既に、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)をモデルウイルスとして、そのウイルス主構造蛋白であるGag蛋白を発現させた酵母細胞からのウイルス様粒子産生系を確立するとともに、この酵母からの粒子産生系が高等真核細胞からの粒子産生系と酷似することを明らかにしている。本研究では、1)エンドソーム経路の輸送蛋白質欠損酵母株を用い、Gag蛋白の細胞内輸送経路を網羅的に解析するとともに、2)HIV-2に固有の粒子形成領域を同定した。 1)エンドソーム輸送経路 酵母のエンドソーム経路輸送蛋白欠損株及びエンドソーム小胞形成及び輸送欠損/変異株を用いて解析した。形質膜からのエンドソーム小胞形成に関与する蛋白質群の欠損あるいは変異(end3,4,5,6)株では、Gag蛋白は細胞内の膜画分にmis-sortingし、粒子産生量は減少した。初期及び後期エンドソームのt-SNAREs(Tlg2,Pep12)の欠損株においても、Gag蛋白はmis-sortingされ、粒子産生が低下した。しかしながら、リソソームのt-SNARE(Vam3)欠損株ではGag蛋白輸送及び粒子産生は正常に進行した。後期ゴルジ体から後期エンドソームへの輸送蛋白質Vps10、逆に、後期エンドソームから後期ゴルジ体への輸送蛋白質群(Vps35,29)、また、後期エンドソームにおいて腔内への膜陥入に関与する輸送蛋白質Vps23(TSG101ホモログ)は、本細胞系でのGag蛋白形質膜輸送には不要であった。これらの結果から、Gag蛋白は、後期エンドソームから上流に位置する輸送経路を経て形質膜に輸送されると考えられた。 2)HIV-2/SIVmac固有の粒子形成領域の同定 HIV及びSIVはその系統樹から、HIV-1/SIVcpz,HIV-2/SIVmac,SIVmnd,SIVagmの4つに大別される。我々は既に、酵母細胞ではHIV-2/SIVmacのGag粒子が形成できないを観察している。この原因を調べたところ、Gag蛋白の細胞内輸送及び形質膜targetingや膜親和性に異常は認められないものの、粒子出芽の段階で阻止されていること、その責任領域はGag蛋白アミノ末端のMA領域であることを見いだした。
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