研究課題/領域番号 |
15390153
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
鶴見 達也 愛知県がんセンター, 腫瘍ウイルス学部, 部長 (90172072)
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研究分担者 |
菅谷 豊 愛知県がんセンター, 腫瘍ウイルス学部, リサーチレジデント
磯村 寛樹 愛知県がんセンター, 腫瘍ウイルス学部, 研究員 (20294415)
大黒 徹 愛知県がんセンター, 腫瘍ウイルス学部, 研究員 (80291409)
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キーワード | EBV / 潜伏感染 / 溶解感染 / CDK阻害剤 |
研究概要 |
Epstein-Barr Virus (EBV)は、通常静止期にあるBリンパ球に感染し、細胞周期を回転させ、Bリンパ球は分裂増殖を始める。EBV感染B細胞はウイルス産生はせず、潜伏感染状態にある。EBV陽性癌細胞はEBV潜伏感染状態にあるが、EBV陽性がんの克服を考えるうえで溶解感染(ウイルス増殖感染)を誘導し抗ヘルペス剤処理をすることにより細胞死を誘導させ、積極的に死滅させる方法が提案されている。本研究はその戦略における分子基盤を明らかにする為に(1)潜伏感染EBVゲノム複製機構(2)溶解感染EBVゲノム複製機構(3)潜伏感染からの再活性化の全体像の機構解明の3つを研究目標においている。これまでの我々の解析からEBV潜伏感染B細胞に溶解感染を誘導するとS期様細胞環境、即ちRB蛋白質が高リン酸化状態となる細胞環境下で溶解感染が遂行されることを報告した(Kudoh et al.J.Virol.77:851-861.2003)。H15年度はなぜ溶解感染遂行にS期様細胞環境が必要であるのか報告する。 Epstein-Barr virus潜伏感染Bリンパ球細胞に溶解感染を誘導するとRB蛋白質は高リン酸化されS-phase likeの環境に至る。S期CDK活性を薬剤(Purvalanol A, Roscovitin)で抑制しRB蛋白質を低リン酸化状態にし細胞周期を強制的にG1/G2期にした状態でウイルス複製感染へ与える影響を検討した。Tet-BZLF1/B95-8細胞にDoxycyclineを添加しBZLF1蛋白質を強制発現させたが、CDK阻害剤存在下ではウイルスDNA複製は著しく抑制されることが明らかとなった。さらに、CDK阻害剤の効果は添加する時期により大きく異なり、一旦ウイルスDNA複製が始まった細胞にはほとんど影響無くウイルスDNA合成が観察された。CDK阻害剤添加により最早期、早期ウイルス蛋白質の発現が著しく抑制されることが観察され、さらにノザンブロット解析を行ったところ、CDK阻害剤存在下ではEBVのウイルス複製関連因子を含む溶解感染蛋白質群の転写が阻害されていることが明らかとなった。以上よりS期CDK活性により構築される細胞内環境は、EBV溶解感染遺伝子群の発現に必要であることが明らかとなった(Kudoh et al.J.Virol in press)。S期様細胞環境ではRbから遊離された活性型E2FあるいはE2Fにより発現増強さるSp1などの転写因子が最早期、早期ウイルス蛋白質の発現に必須であると考えられる。
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