研究概要 |
1.TLR3についてアダプター分子が細胞応答の変調に関与し、ウィルスのdsRNA刺激で独自のIFNβ誘導系を活性化することを検証した。2.TG,KOマウスを作製して実際の麻疹ウィルス感染でこのTLR依存性の防御系がいかに機能するかを解析した。3.麻疹の免疫抑制について感染-免疫抑制の分子機構をIFN誘導の見地から解析した。 1.アダプター分子TICAM-1(TRIF)はTLR3,TLR4の下流でIFN-βの誘導に関与することを証明した(文献3,7)。2005年からウイルスセンサーとして細胞質内のdsRNA認識の担当分子がRIG-I,MDA5と同定された。TLR3は細胞質外のdsRNAを認識するので、ウイルスセンサー以外の役割があると推定された。抗原提示細胞のcross-presentationはTLR3が主役を果たすこと、NK活性化にもTICAM-1経路が必須であること、などが判明しており、今後の分子機構の解析が待たれる。 2.CD46/CD150 double TG miceを作製した(文献16)。野外株を用いた感染実験ではdouble TG miceは麻疹感染を起こさなかった。CD46/CD150 TGに加えてIFNAR KOのtriple mutant miceを用いて始めて感染が観察された。しかし、感染細胞は証明されても症状は出なかった。感染細胞はCD11c陽性の樹状細胞が主体であった。即ち、IFN活性を抑制するとCD46/CD150 miceは麻疹ウイルスの樹状細胞感染を誘起する。この点はin vitro樹状細胞でも検証できた。 3.麻疹ウイルスの免疫抑制と樹状細胞感染の相関性については検討中である。Genechip解析で麻疹ウイルス特異的に誘導される遺伝子を選択抽出中である。感染と免疫抑制の関係をこれらの遺伝子の機能情報から洗い出す予定である。
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