研究課題
【研究目的】喫煙は21世紀の成熟社会における最大級の健康問題として、また深刻な社会経済問題として、その対策は焦眉の急となっている。国際的には喫煙による死亡数の低減を目的とした「たばこ規制枠組み条約」が発効し、国内的には疾病予防を主眼とする「健康増進法」が制定されており、喫煙に起因するさまざまな疾病の罹患・死亡を防止することは、先進国の大きな責務となりつつある。本研究は、種々の疾病の確実な予防策としての禁煙が個人および社会に果たしうる経済効果についてシステムモデルを用いて検討し、費用効果的な喫煙対策の立案に資する基礎資料を得ることを目的とする。【対象と方法】喫煙および禁煙の経過の類型化により開発したシステムモデルについて、モデルの信頼性、妥当性を検証するとともにモデルの精緻化を図る。また、このモデルを用いて、喫煙でがんの罹患率、死亡率が増加することによる逸失利益についての推計を行い、禁煙の経済効果の試算を行う。【結果と考察】現在喫煙、過去喫煙、非喫煙の3群の状態推移モデルを作成し、喫煙による肺がんの罹患率および死亡率の増加から相対的な逸失利益(生涯賃金稼得額の1/2と平均医療費の差額)を算定した。現在喫煙している男性の肺がん罹患による逸失利益の増分(国民一人当たり)は、60歳149万円、70歳143万円をピークに20〜50歳で約100万円、75歳以降で減少する。女性では、20歳の34万円から漸増し、70歳の86万円をピークに高齢になるにつれ減少する。過去喫煙では、男性で若年の4万円から年齢とともに漸減、女性で18万円から同じく漸減する。文献より渉猟したパラメータの不足などから、感度分析では結果に不都合が生じる年齢階級があり、今後、独自調査を実施するなどしてモデルの改良を図るとともに、喫煙による他の疾病の罹患についてもモデルに組み込む予定である。
すべて 2005 2004
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