I.肝細胞癌入院患者の医療費推定 昨年度に続き、2003年度に肝細胞癌を主傷病名として入院となった患者のデータを加え肝細胞癌患者における非代償性肝硬変症が合併した場合の医療費変動についての解析ならびに肝疾患以外の合併症がある場合の医療費の変動について、多変量解析によって検討を行った。合併症については診療報酬請求書上の病名の記載と医療行為明細の内容からの2通りの方法で確認を行った。その結果、肝細胞癌治療目的とした入院では、(1)医療費に最も影響する因子は入院日数で、以下、手術、抗ガン剤などによる動注塞栓術(TACE)、そして化学療法が有意なものであり、非代償性肝硬変症に関しての治療は有意な因子ではなかった。(2)今回のデータからは診療報酬請求書に記入された併発症や合併症を因子(説明変数)とした解析では入院日数以外に有意に影響するものは明らかではなかった。また、診療行為明細から想定される合併症と診療報酬請求に記載された合併症との一致度をみると記載された併発症、合併症の頻度は有意に少なく、診療行為明細からの解析の有用性が示唆された。(3)治療別の医療費に対する影響度合いをみると、肝細胞癌に対する治療の度合いが大きく、強力ミノファーゲンなどの慢性肝炎や肝硬変症に対する基本治療の影響度合いは非常に小さいものであった。これらから肝細胞癌患者の入院医療費についてそれぞれの治療行為や合併症の有無を医療費のコンポーネントと考えることの妥当性について検討した。 II.肝細胞癌治療の費用効果分析 肝細胞癌に対するスクリーニング検査の費用効果分析を念頭に、肝細胞癌発見後の治療(手術、PEITやRFAへなどの局所療法、TACE、化学療法など)に対する費用効果分析のプレリミナリーモデルの作成を行った。その際、それぞれの治療における効果(寛解率、寛解後の再発期間)と再発後の治療選択、異なる治療への遷移確率を当院第一内科入院患者についてretrospectiveに調査を行った。
|