I.C型慢性肝炎とその続発症に対する治療介入と肝細胞癌スクリーニングの評価 中等度C型慢性肝炎(活動性)とその続発症の自然経過モデルにインターフェロン投与および肝細胞癌スクリーニングの有無を組み入れた場合に、早期発見された肝細胞癌の5年生存率が45%以上になって初めてスクリーニング群の費用対効果が非スクリーニング群と比較して国際的許容範囲(5万ドル/QALYs以下)となった。また、初年度の研究結果から、肝細胞癌発見時の腫瘍径とその後の生存率を定期観察群と非定期観察群とで比較した50%生存期間はそれぞれ49ヶ月および34ヶ月であったことから、早期発見で期待される単発小肝細胞癌の症例データを集積した。単発小肝細胞癌に対する治療効果モデル(II参照)では、経皮的局所療法(LAT)の場合、集積された実データの5年生存率が55%に対して56%と推定され、スクリーニングによる早期発見の治療対効果が期待できる結果であった。 II.病期に応じた肝細胞癌治療効果モデルの作成と単発小肝細胞癌における費用対効果 昨年の試行モデルをベースに治療の選択が病期に対応(早期:外科的切除あるいはLAT、中期:LATと肝動脈化学塞栓術(TACE)の併用、進行期:TACE、高度進行期:化学療法)したものとして治療遷移を基にしたマルコフモデルを作成した。山口大学における患者データをもとに単発小肝細胞癌(腫瘍径3cm以下)における外科的切除またはLATの比較を行い、モデルの妥当性(実症例におけるKaplan-Meierによる推量とモデルによる生存曲線の比較ならびに5年生存率の比較)の検証を行いその費用対効果を求めた。単発小肝細胞癌に対しては外科的切除がLATに比べ費用対効果に優れているという一次結果を医学判断学会(SMDM)にて報告した。
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