研究概要 |
薬物誘導性の肝毒性発現において、薬物投与に起因して発現が変動する共通のマーカー遺伝子を見出すことを本年の目的とした。典型的な肝毒性を示す化合物5種類について、ラットin vivo投与後の肝における網羅的な遺伝子の発現変動について、投与6,12,24,48時間後の検体を用いて、ラットDNAチップにより解析した。検討した化合物と投与量は四塩化炭素(CT,1mL/kg)、ブロモベンゼン(BB,2.5mmol/kg)、アセトアミノフェン(APAP,500mg/kg)、ジエチルニトロソアミン(DMN,20mg/kg)、チオアセタミド(TA,400mg/kg)、であり、DNAチップはCode Link社製を用い、解析までの全てを当研究室で行った。血清ALT,AST,LDHおよびビリルビン値は、6時間では変化が全くなく、12時間以後に値が変動する投与量を設定した。DNAチップに搭載されている約1万の遺伝子について網羅的な解析の結果、最も多くの遺伝子が変動する時間は、化合物によって大きく異なっており、CT:6時間、APAP:12時間、TA,BB:24時間、DMN:48時間であった。カテゴリー解析では、特定の遺伝子群の変動と毒性に関係は見出されなく、遺伝子群の中でも様々な変動が認められた。階層クラスタリングの結果、どの投与後時間においてもAPAPは他の化合物と異なったクラスターに分類された。さらにQTクラスタリング解析などを駆使し、各化合物において最も多くの遺伝子が変化を示す各時間において、共通して誘導および抑制を受ける遺伝子の候補を各5種類選択した。これらの遺伝子について、各ラットにおいてreal-time PCRにより発現変動を細かく調べた結果、DNAチップのデータは信頼性が高いことが認められた。さらに、これらの遺伝子の発現誘導または抑制が実際のin vivoに及ぼす影響についてsiRNAを用いた遺伝子機能を阻害する手法により検討中である。
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