研究概要 |
昨年度の本研究において,経口吸収性を有しないTAK-779に代わる新規CCR5拮抗薬として,経口吸収性を有し,抗HIV-1活性においてもTAK-779を上回るTAK-220を同定することに成功した。TAK-779はアニリド系,TAK-220はピペリジン系と,その化学構造の基本骨格が全くことなるため,CCR5拮抗薬および抗HIV-1薬としての性質も異なることも明らかにした。そこで,今年度の研究においては,TAK-779と同じアニリドを基本骨格としながらも,経口吸収性を有する誘導体について検討したところ,新規薬剤TAK-652を同定した。TAK-652はCCR5発現細胞に対するリガンド(RANTES,MIP-1α,MIP-1β)の結合を数nMの濃度で抑制した。また,CCR2b発現細胞へのリガンド(MCP-1)の結合も強く抑制したが,その他のケモカインレセプターに対するリガンドの結合抑制は僅かであるか,もしくはほとんど認められなかった。また,TAK-652はCCR5をコレセプターとして感染するR5HIV-1の増殖を,1nM以下の濃度でほぼ完全に抑制することが分かった。一方で,CXCR4をコレセプターとして感染するX4HIV-1に対しては全く効果を示さなかった。さらに,異なるサブタイプ(A-G)のエンベロープ蛋白を有するR5HIV-1はTAK-652に対して等しく感受性を有することも分かった。健常人に対する単回経口投与において,TAK-652は100mgの投与量まで,安全で望ましい体内動態を示した。25mgの投与24時間後の血中濃度は,薬剤が抗HIV-1効果を示す濃度をはるかに上回ることから,TAK-652は1日1回経口投与可能な新規抗HIV-1薬として,臨床試験においてその有効性を証明する価値があると思われた。
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