最近、いわゆる「アスピリン不応症」の病態が明確になってきており、大規模研究でも不応症の患者では血栓の予防効果が低く再発率が高いことが示されている。したがって抗血小板薬に対する感受性の原因となる因子の検出が急務となっている。本研究の目的は、抗血小板薬、特にアスピリンの効果の個体差の原因を、遺伝的多様性の観点から解明し、個別化医療の為の基礎データを構築することにある。昨年度までの研究で高濃度アスピリンに暴露した血小板は全血血小板機能測定装置(PFA-100)による閉鎖時間が著明に延長することが明らかとなった。また不応症評価に適切なアスピリン濃度を決定した。PFA-100で評価すると健常人集団でのアスピリン不応と思われる個体が数十%に見られた。またアスピリン不応グループは、別の血小板機能評価法であるWBA-Neo(コラーゲン刺激)およびPRP比濁法(コラーゲン刺激)でも同様にアスピリンに対する感受性が低いこと、アスピリン非添加時の凝集率が高く、TXB_2産生量も多いことが明らかとなった。今年度の研究成果は、PFA-100で評価したアスピリン感受性に関連する遺伝子多型を検出したこと、CVDの疾患感受性に関与する遺伝子多型を検出したこと、血小板ミトコンドリア遺伝子多型を検出するための予備検討が進められたこと、である。今年度のこれらの研究成果から抗血小板薬の反応性と関係する候補分子が検出された。今後機能との関連を詳細に検討すること、前向き研究により、遺伝子変異や血小板機能と臨床的アウトカムとの比較が必要である。
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