網羅的発現解析と知識情報処理に基づく統合的オーダーメード癌治療戦略システムの構築

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390181
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 愛知県がんセンター
• 研究代表者: 高橋 隆 愛知県がんセンター, 分子腫瘍学部, 研究員 (50231395)
• 研究分担者: 樋田 豊明 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (80250249) ; 光冨 徹哉 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (70209807) ; 冨田 秀太 愛知県がんセンター, 分子腫瘍学部, 研究員 (10372111) ; 谷田部 恭 愛知県がんセンター, 研究所, 研究員 (90280809)
• キーワード: 発現プロフィリング / マイクロアレー / バイオインフォマティクス / プロテオミクス / マススペクトロメトリー

研究概要

1)mRNA及び蛋白の網羅的発現解析に基づく生存可能期間の個別的診断システムの開発
50症例の肺癌腫瘍検体を用い、8,644遺伝子について網羅的遺伝子発現プロファイルを採取し、予後関連遺伝子をsignal-ton-noise解析によって抽出した。バイオインフォマティクス解析によってweighted voting法による25遺伝子を用いた予後予測システムにおいて82%の予後予測正答率を得た。さらに、組織型別に予後予測システムを構築し、最も多い腺癌などを含む非扁平上皮癌外科切除例の5年生存の可否を、91%の確率で予測することに成功した。なお、他のSVM法やk-NN法によってもほぼ匹敵する予測精度が得られた。現在さらなる予測精度の向上を目指し、20,000をこえる遺伝子と200例の肺癌外科切除症例を対象とする検討を進めつつある。
また、MALDI-TOF-MSを用いた網羅的タンパク発現解析に関する基盤的検討をすすめた結果、薄切した凍結がん組織標本の切片を用いて、発現プロファイルを安定して採取することに成功した。現在、鋭意発現プロファイルデータの集積につとめており、今後は上述のごとくにバイオインフォマティクス解析へと進む予定である。
2)腫瘍組織を用いた抗がん剤・分子標的薬に対する治療感受性予測システム
抗癌剤や分子標的薬に対する治療感受性の予測を可能とすることを目的とし、細胞株を用いた検討を開始した。ヒト肺癌細胞株20株の14種類の抗癌剤或いは分子標的薬に対する感受性を検討しIC50値を求めた。8,644遺伝子について網羅的遺伝子発現プロファイルを採取し、IC50値と遺伝子発現との関連性について検討を加え、多剤耐性に関わる遺伝子群の同定に成功した。現在さらに感受性予測システムの構築を目指し、バイオインフォマティクス解析を進めつつある。

研究成果

• [文献書誌] Tomida, S., et al.: "Gene expression-based, individualized outcome prediction of surgically treated lung cancer patients."Oncogene. (in press).
• [文献書誌] Masuda, A., et al.: "Association between mitotic spindle checkpoint impairment and susceptibility to the induction of apoptosis by antimicrotubule agents in human lung cancers."Am.J.Pathol.. 163. 1106-1119 (2003)
• [文献書誌] Konishi, H., et al.: "Detailed characterization of a homozygously deleted region corresponding to a candidate tumor suppressor locus at distal 17p13.3 in human lung cancer."Oncogene. 22. 1892-1905 (2003)
• [文献書誌] Osada, H., et al.: "Reduced expression of class II HDAC genes are associated with poor prognosis in lung cancer patients"Int.J.Cancer. (in press).
• [文献書誌] Endo, S., et al.: "Prognostic model of pulmonary adenocarcinoma by expression profiling of eight genes as determined by quantitative real-time RT-PCR."J.Clin.Oncol.. 22. 811-819 (2004)
• [文献書誌] Iwafuchi, H., et al.: "Phenotypic composition of salivary gland tumors ; an application of principle component analysis to tissue microarray data."Modern Pathol.. (in press).