研究概要 |
本研究では、高次神経活動に係わる必須微量金属の代謝制御機構を金属イオン膜輸送蛋白、メタロシャペロンおよび金属結合蛋白を中心にして明らかにしようとした。各種培養細胞を用いて、銅過剰状態および銅欠乏状態での銅膜輸送蛋白であるCtr1および銅のメタロシャペロンであるCCS、CCSから銅を受け取る酵素Cu,Zn-SODの変動を検討した。銅欠乏状態では、CCSおよびCu,Zn-SODのタンパク量が増加した。一方、銅過剰状態では、CCSおよびCu,Zn-SODのタンパク量が著名な低下を示した。さらに亜鉛摂取過剰動物を作成し、亜鉛過剰状態では、腸管での銅吸収阻害がおこり、その原因として腸管細胞中の吸収可能な銅が低下すること、銅イオン膜輸送蛋白ATP7Aの変動が示唆された。 中枢神経細胞に特異的に発現するメタロチオネイン-3(MT-3)の金属結合能を検討し、MT-3は他のメタロチオネインに比較して銅との結合力が高いことが明らかになった。 神経細胞由来の培養細胞に銅のキレートを添加すると、細胞内のアラキドン酸代謝が変動することが明らかになった。その原因として銅欠乏によるCu,Zn-SOD活性の低下がNOや活性酸素の上昇を引き起こし、細胞を障害するとともに、アラキドン酸代謝の変動をもたらしていることが示唆された。 中枢神経機能に対する金属の影響を明らかにするために、神経伝達の視覚的観察法を開発し、トリブチルスズの影響を解析した。その結果、トリブチルスズは、学習・記憶に関係することが知られる神経伝達の長期増強を阻害することが明らかになった。さらに、中枢神経障害を誘発する金属結合蛋白および活性酸素の障害発生機構の検討もあわせて行った。
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