大気中ナノ粒子に含有され酸化ストレスを惹起するキノン化合物の生体影響評価

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390184
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 熊谷 嘉人 筑波大学, 社会医学系, 教授 (00250100)
• キーワード: 大気中ナノ粒子 / キノン系化合物 / 酸化ストレス / 血管収縮 / 気管収縮

研究概要

(1)キノン系化合物の同定・化学的特性:国立環境研究所で採取したディーゼル排出微粒子(DEP)および米国カリフォルニア地区で採取した大気中微小粒子(PM2.5)にそれぞれ含まれるキノン系化合物を定量分析した結果、9.10-フェナントラキノン(PQ)が主要キノン系化合物であること、およびDEPおよびPM2.5中に含まれる新規キノン系化合物として1,2-ナフトキノン(NQ)をGC-MSで同定した。酸素電極法により、PQおよびNQ共に、ジチオール化合物と触媒的に反応して血管内皮由来収縮因子スーパーオキシドを過剰産生することが明らかとなった。高速液体クロマトグラフィー法により、NQはタンパク質システイン残基と共有結合能を有したが、PQの場合は全く認められなかった。
(2)キノン系化合物の血管収縮作用:PQおよびNQはラット大動脈リング標本を用量依存的に収縮した。フェナンスレンおよびナフタレン関連化合物との比較検討より、PQおよびNQによる血管収縮反応はキノン骨格の存在が必須であることが示された。特にPQによって生じる血管収縮反応にはL型カルシウムチャンネルでなくレセプター型カルシウムチャンネルが関与していることが示唆された。
(3)キノン系化合物の気管収縮作用:NQはモルモット気管リング標本を用量依存的に収縮した。しかし、PQには気管収縮能はなかった。各種アンタゴニストを使用した薬理実験を行った結果、NQによる気管収縮にはカプサイシンレセプターの活性化に起因するタキキニンの遊離によりL型カルシウムチャンネルを介する細胞内カルシウム濃度上昇が関係することが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Cho, A.K., et al.: "Determination of four quinones in diesel exhaust particles, SRM1649a and atmospheric PM2.5"Aerosol Science and Technology. (in press). (2004)
• [文献書誌] Cui, R., et al.: "Urinary cyclic GMP excretion and blood pressure levels in general population"Atherosclerosis. 172. 161-166 (2004)
• [文献書誌] Inoue, K., et al.: "Effect of 15-deoxy-Delta(12,14)-prostaglandin J(2) on acute lung injury induced by lipopolysaccharide in mice"European Journal of Pharmacology. 481. 261-269 (2003)
• [文献書誌] Yanagisavva, R., et al.: "Enhancement of acute lung injury related to bacterial endotoxin by components of diesel exhaust particles"Thorax. 58. 605-612 (2003)
• [文献書誌] Maruyama, A., et al.: "Oxidative stress-inducible qorA encodes an NADPH-dependent quinone oxidoreductase catalysing a one-electron reduction in Staphylococcus Aureus"Microbiology. 149. 389-398 (2003)
• [文献書誌] Miyauchi, T., et al.: "Exercise causes a tissue-specific change of NO production in the kidney and lung"Journal of Applied Physiology. 94. 60-68 (2003)