研究概要 |
小児の気管支喘息に関する疫学調査で使用することが可能な気道炎症の指標として,呼気中一酸化窒素(NO)濃度と血清C-反応性蛋白(CRP)値の意義について検討した。 呼気NO濃度については,一定の圧・流速で呼気を捕集することが可能なサンプリング管を作製し,測定方法についての基礎的検討を行った。健常志願者を対象として,作製したサンプリング管を用いて様々な条件下でバッグ中に呼気を捕集し,窒素酸化物自動測定装置により呼気中NO濃度を測定した。圧1.5KPa,流速7.9L/secの一定条件下で繰り返し測定したところ,気道症状のない場合には呼気中NO濃度はほぼ一定の値であることが明らかとなった。死腔分を約300ml廃棄することにより大気中のNO濃度の影響は排除できると考えられた。また,捕集後24時間まではバッグ内の呼気中NO濃度に大きな変化は認められなかった。 一方,千葉県市川市及び君津市の6小学校の児童を対象として,呼吸器症状質問票調査を行い,同意の得られたものは採血を実施し,血清CRP値を測定した。質問票は2,965名,採血は2,107名の協力が得られた。このうち喘息様症状が認められたものは市川市6.2%,君津市6.3%,喘鳴症状はそれぞれ13.7%,11.7%であり,いずれも都市間に有意な差は認められなかった。血清CRPの幾何平均値は,喘息様症状あるもの0.033mg/dl,ないもの0.030mg/dl,喘鳴症状のあるもの0.034mg/dl,ないもの0.029mg/dlであり,いずれも症状のあるものが高値であった。喘鳴症状の有無による差は有意であった(p=0.015)は,喘息様症状の有無による差は有意ではなかった。 以上より,小児の気管支喘息における気道炎症を評価する指標として,呼気NOおよび血清CRP値は有用であると考えられた。今後,これらに影響する諸条件について検討を進める予定である。
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