研究概要 |
小児の気管支喘息に関する疫学調査で使用するための気道炎症の指標に関する検討を行った。呼気中一酸化窒素濃度は,アレルギー性疾患の既往があるものは既往のないものよりも高値であり,気道炎症の非侵襲的な指標となりうることが示された。しかし,一定の圧・流速条件で呼気を採取することが低年齢児には難しいこと,採取には一人当たり数分間要することなどから,小児を対象とした疫学調査での使用には方法の改善が必要であると判断された。 一方,前年に引き続き千葉県市川市及び君津市の小学校の児童を対象に,呼吸器症状質問票調査とともに,同意の得られたものの採血を実施し,血清高感度C-反応性蛋白(CRP)値を測定した。2年間続けて呼吸器症状調査の結果が得られたものは1,508名であり,このうち2年ともに喘鳴症状があったものは107名,1年目になく2年目に発症したもの47名,1年目にあり2年目に寛解していたもの64名,2年ともになかったもの1,290名であった。初年度の血清高感度CRP幾何平均値は,喘鳴症状が持続したもの0.045mg/dl,発症したもの0.046mg/dl,寛解したもの0.037mg/dl,なかったもの0.035mg/dlであり,2年目はそれぞれ0.033mg/dl,0.034mg/dl,0.027mg/dl,0.028mg/dlであった。また,初年度の血清高感度CRP値が0.2mg/dl以上のものの割合はそれぞれ13.2%,12.2%,8.0%,6.8%,2年目はそれぞれ10.8%,7.9%,4.4%,6.2%あり,いずれも喘鳴症状が持続または発症したものが有意に高値であった。 以上より,血清高感度CRP値は小児の喘鳴症状を評価する客観的指標としては有用であると考えられ,喘鳴症状の予後を予測しうる可能性が示唆された。今後,これらに影響する諸条件について検討を進める予定である。
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