研究概要 |
小児の気管支喘息に関する疫学調査で使用するための気道炎症の指標に関する検討を行った。呼気中一酸化窒素濃度は,喘息の既往があるものは既往のないものよりも高値であったが,(1)大気汚染物質濃度の増加が短期的に影響すること,(2)呼気の採取は一定の圧・流速条件で行わねばならず,低年齢児での実施は難しいこと,(3)年長児でも採取には一人当たり数分間要することから,現時点では小児集団を対象とした疫学調査で用いることは困難であると判断された。 一方,千葉県市川市及び君津市の小学校の児童を対象に3年間にわたって呼吸器症状質問票調査とともに,同意の得られたものの採血を実施し,血清高感度C-反応性蛋白(CRP)値を測定した。3年間ともに呼吸器症状調査の有効な結果が得られたものは1,184名,このうち1年目に血液検査を受診したものは1,007名であった。3年間を通じて喘鳴症状がなかったものは955名,3年間に喘鳴症状が1回のみあったもの108名,2回あったもの48名,3回あったもの73名であった。初年度の血清CRP幾何平均値は,それぞれ0.036mg/dl,0.045mg/dl,0.045mg/dl,0.049mg/dlであり,喘鳴回数が多いほど高値であった。血清CRP値が上位四分位値(0.05mg/dl)以上のものは初年度の喘鳴有症率が10.5%であり,0.05mg/dl未満のもの(7.0%)よりも有意に高かった。2年目の喘鳴有症率はそれぞれ12.4%,7.9%であり,3年目は10.5%,8.7%であり,いずれもCRP高値群において高率であった。2年目の喘鳴有症率は両群間の差が有意であったが,3年目には有意ではなかった。 以上より,血清高感度CRP値は小児の喘鳴症状を評価する客観的指標として有用であると考えられ,同時期だけでなく,翌年以降の喘鳴症状とも関連する可能性が示唆された。
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