研究概要 |
本年度は主として,曝露と活動との関連を明らかにするための調査・測定を行った. インドネシア:現地研究機関の河川水質調査の結果に基づき、西ジャワ州バンドゥン県において小児の曝露及び発達への影響が懸念されるような3集落(A)を選定,また,このような汚染の報告がない同州ボゴール県内の2集落を対照地域(B)として選定し,平成15年9-12月にかけて,現地調査を行なった.対象学童数はA地域約250,B地域約400の合計約650名である.当該地域内の小学校において,有機リン系農薬の曝露指標である血中コリンエステラーゼ活性の測定を行ない,A地域で最も下流の集落において,その有意な低下を見出した.これらの対象学童について,活動や遊びの場所,飲料水の水源などについて聞き取り調査をおこなった.また,対象者よりスポット尿を集めた.これらについてICP-MSを用いて重金属測定を行うとともに,有機リン系ならびに有機塩素系農薬のスクリーニングを行なうことを検討中である. バングラデシュ:平成15年5-6月,砒素汚染地域である北西農村部において現地調査を実施,母親-乳児のペア(n=20)を対象とし,授乳量,離乳食の摂取量について実測調査を行なうとともに,母乳,離乳食をサンプリングした.これらのサンプルのヒ素濃度をICP-MSを用いて測定し,乳児における砒素曝露量の把握と相対的寄与を評価した.その結果,母乳中の砒素濃度は井戸水よりも低いものの,飲料水の安全基準よりは高値を示す場合があること,総砒素摂取に対する離乳食の寄与が無視できないことを見出した.
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