研究概要 |
近年,花粉症などアトピー性アレルギー疾患の増加が著しく,各方面から重要な問題とされてきている。本研究では日本列島の花粉症発症率の広範囲な地域差に着目し,それぞれの地域の環境要因や年齢階級別発症率の違いを地域集団特性として把握し,疫学的に解析することを目的としている。 対象地域としては,花粉飛散状況が明らかにされている富山県等とともに,スギ天然林の多い鹿児島県屋久島を調査地点に加え,花粉症のベースラインを明らかにすることにより,花粉曝露の本態をより明確に記載,解析することを意図している。 調査は3年計画であるが,今年度は屋久島調査に着手した。当該地域の空中花粉観測とともに質問紙を用いた花粉症に関する調査を約2,500人の住民を対象に実施した。現在回収を待って解析を準備している。 富山県においてはスギ花粉飛散数と花粉症初発症状の関係を明らかにするとともに,花粉症対策における花粉アレルゲン曝露回避の意義を明らかにした。また花粉症情報の高度化をめざし,従来のダーラム型花粉検索器に加えリアルタイム花粉測定装置を用いて空中花粉に関する解析を実施し,両者の特徴とその相関関係を検討中である。 今後,スギ植生を含む環境調査を実施,花粉アレルゲンや境汚染物質などの影響を免疫学的に解析し,花粉曝露と環境要因等との複合的作用について総合的に明らかにしたいと考えている。
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