研究概要 |
近年,花粉症等アトピー性アレルギー疾患の増加が著しく,各方面から重要な問題とされている。 本研究では日本列島の花粉症発症率の広範囲な地域差に着目し,それぞれの地域の環境要因や年齢階級別発症率の違いを地域集団特性として把握し,疫学的に解析することを目的としている。 対象地域としては,花粉飛散状況等が明らかにされている富山県等とともに,スギ天然林の豊富な鹿児島県屋久島を調査地点に加え,花粉症発症率のベースラインを明らかにすることにより,花粉曝露の本態をより明確に記載,解析することを意図している。 調査は3年計画であるが,今年度は2年目の調査として,屋久島を中心に健康調査と環境調査を実施した。当該地域の空中花粉とともに質問紙を用いた花粉症に関する調査を実施し,258世帯885人より回答を得た。その結果,春の花粉症症状は住民の11%〜14%に認められるものの,花粉症と診断されたものは1%〜8%と低率であることが判明した。現在血液検査を実施中である。 富山県においては,スギ花粉飛散と花粉症初発症状の関連性を明らかにするとともに,花粉症発症率の地域差を日本海からの距離を考慮した発症地域モデルとして,統計的にマップ化する試みを開始した。花粉症におけるヒカゲノカズラ胞子アレルゲンの意義を明らかにした。また,花粉症情報の高度化をめざし,従来のダーラム型花粉検索器に加え,リアルタイム花粉計測システムを用いて空中花粉解析を実施し,両者の特徴とその相関関係を検討中である。 今後,今年度採取した屋久杉花粉アレルゲン等の解析を実施するとともに,花粉アレルゲンと環境汚染物質などの影響を免疫学的に解析し,花粉曝露と環境要因等との複合的作用を総合的に明らかにしたいと考えている。
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