高齢者の下限定義に該当する65歳時点の生活習慣、体力、免疫能などの違いがどのように老い(死亡、罹患、認知症、寝たきり)に影響を及ぼすかを検討し、さらにこれら情報を元に健やかに老いることを目指した積極的な働きかけを提案するために研究を行った。本研究は1996年度から2005年度までN市で開始された65歳すこやか健診をベースとして10年間継続し、その結果、3098名の65歳コホートが構築された。追跡のために、ベースライン時点より6年後に生存しかつN市内に在住する者に対して健康状態調査を行っている。健康状態の把握には、2002年度に開始された70歳ことぶき健診の場を用い、6年間の疾病罹患ならびに6年後の時点での検査値異常を調査した。さらに、未受診者には市と共同した調査を行い、認知症、寝たきりへの移行も調べた(訪問調査)。死亡、転出は市と協力して把握しており、この調査は、2005年度受診者が70歳健診を受診するまで継続する予定である。 本コホートのベースライン・データからは、国民栄養調査などで示された当該年齢層の日本人の一般的な像とくらべたときやや健康サイドにシフトしているものの、全体として著しい差異はないことが明らかとなっている。今後、本コホートを追跡・分析することによって、普通の日本人の高齢者の入り口における毎日の過ごし方や環境が、その後の良好な状態にどのように影響するかを解明する糸口になるものと思われる。
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