研究概要 |
本研究では、1996年から循環器疾患コホート調査を実施しているE県A市の地域集団(男女計4,475人:30歳以上)を対象に2004年末まで追跡調査を実施し、30,885人年の追跡を完了した。循環器疾患の発症については、WHO/MONICAの診断基準に即して脳卒中96例、急性心筋梗塞12例の発症を認めた。また、脳卒中の病型の内訳は、脳梗塞74例、脳出血15例、くも膜下出血7例であった。 これらの者について、ベースライン時に同意を得て保存した凍結血清を用いて、循環器疾患(脳卒中+心筋梗塞)case例に対して、性・年齢をマッチさせたcontrol群を1:3の割合で抽出し、nested-case control studyの手法を用いて重回帰分析によるリスク解析を行った。 その結果、case群とcontrol群との比較において、喫煙状況のみを調整した解析では、bFGF値はcase群の8.96±0.93pg/mL(mean±SE、以下同じ)に対しcontrol群では10.28pg/mLとcase群で低い傾向を示した。また、HGFについては、case群では0.35±0.02ng/mLとcontrol群の0.39±0.01ng/mLに比べて有意に低い値であった。HGFに関しては、さらに高血圧、高脂血症、耐糖能異常、肥満を調整しても同様にcase群で有意に低い値を示した。 昨年度までの解析により、bFGF及びHGFはメタボリックシンドロームに関する因子との有意な関連を明らかにしていたが、本年度、新たに循環器疾患発症との関連についても同様の結果を示し、これらの神経成長因子は循環器疾患の新たな危険因子として有用であると考えられた。
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