研究概要 |
大腸腺腫の発症要因に関して、インスリン様増殖因子とその関連病態に注目して研究を進めた。凍結保存の3,370名の血漿を用いてインスリン様増殖因子IGF-I、結合蛋白IGFBP-3ならびにCペプチドを測定し、合わせて、葉酸代謝、アルコール代謝、胆汁酸代謝にかかわる遺伝子多型と関連性を検討した。メタボリック症候群では高インスリン血症が持続しているが、メタボリック症候群は大腸腺腫と強く関連していることが明らかになった。耐糖能異常、高インスリン血症の指標であるCペプチド高値も大腸腺腫リスク上昇と関連していたが、IGF-IやIGFBP-3と大腸腺腫との関連は見られなかった。高血糖、高インスリン血症と関連した大腸腺腫リスクの高まりにはインスリン様増殖因子以外のメカニズムが関与していることを示すものである。大腸がんで関連が指摘されている葉酸代謝酵素の遺伝子多型についても、アルデヒド脱水素酵素ALDH2の遺伝子多型についても大腸腺腫との関連は見られなかったが、胆汁酸生成酵素CYP7A1の遺伝子多型については、大腸がんの場合と同様な関連が見られた。右側結腸腺腫の発生に胆汁酸が関与していることを示す結果であった。喫煙と飲酒はいずれも大腸腺腫リスクの高まりと関連していたが、遠位部大腸腺腫との強い関連が見られた。糖尿病は大腸腺腫の重要な危険因子であるが、コーヒー飲用が糖尿病に予防的であり、喫煙、飲酒は耐糖能悪化と関連していることも明らかになった。大腸発がんにおける食物要因を明らかにする目的で、大腸腺腫と食事パターンとの関連を検討し、乳製品、果物等を中心とする食事パターンが予防的に作用している可能性が示された。さらに、この同じ食事パターンが糖尿病にも予防的であることも分かった。
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