麻疹の伝播と流行発生機序の解析-ワクチン抗体が誘発する不顕性感染と新型流行株

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15390211
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 大阪府立公衆衛生研究所
• 研究代表者: 伊藤 正恵 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (10201328)
• 研究分担者: 堀田 博 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40116249) ; 宮川 広実 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (10346207) ; 奥野 良信 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 総括研究員 (30112064)
• キーワード: 麻疹ウイルス / ワクチン / 中和抗体 / 多様性 / 遺伝子解析

研究概要

1.十代における抗麻疹抗体の年齢分布
大阪府内の高校三年生75人のうち、ワクチン接種者の平均抗麻疹中和抗体価は4.3±1.5(Log2)で、自然麻疹罹患者の5.8±1.6(Log2)より有意に低かった。自然麻疹罹患者12人のうち5人は、ワクチン既接種者であった。この中和抗体価は、同じ地域の2〜5歳児よりも2〜4倍低く、幼少期にワクチン接種で獲得した抗体価が年齢と共に低下し、野外株に感染する例が証明された。
2.麻疹患者からの麻疹ウイルスの分離
府内小児科で麻疹と診断された患者の咽頭拭い液あるいはヘパリン血から、麻疹ウイルスの分離を試みた。43検体中29検体から麻疹ウイルスが分離された。H遺伝子の塩基配列の解析では、これまで調べたものは、すべてH1型であった。現在、残りの遺伝子型の解析を行なっている。
3.家族内感染の調査
上記患者の一部について家族内感染を調査したところ、兄弟間では3件で感染があり、ウイルスも分離された。残りの3件では感染の確認はできなかった。両親では、4家族中1家族で母親からウイルスが分離された。この母親はMMRワクチンを接種しており、ワクチン抗体が感染防御レベル以下に低下していたため、子供から感染したものと考えられる。現在、この例を含め、家族内感染から分離したウイルスについて、H遺伝子のアミノ酸配列を解析している。
4.麻疹ウイルス同一株内での多様性
府内の高校での麻疹集団発生時に、H1型のウイルスが4株分離された。これらの株について、多様性があるかどうか、塩基配列を比較している。また、一人の感染者から分離された麻疹ウイルスについて、感染B95a細胞の細胞変性に多様性が認められた。ウイルスをプラック単離したところ、多核巨細胞を形成するクローンと細胞の円形化を引き起こすクローンが混在しており、両者について比較検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Taguchi, Takashi: "Hepatitis C virus NS5A protein interacts with 2',5'-oligoadenylate synthetase and inhibits antiviral activity of interferon in an ISDR-independent manner."J.Gen.Virol.. 85(in press). (2004)
• [文献書誌] Ogata, Satoshi: "Identification of Hepatitis C Virus (HCV) Subtype 1b Strains That Are Highly, or Only Weakly, Associated with Hepatocellular Carcinoma on the Basis of the Secondary Structure of an Amino-Terminal Portion of the HCV NS3 Protein"J.Clin.Microbiol.. 41(7). 2835-2841 (2003)
• [文献書誌] Goto, Eiji: "c-MIR, a human E3 ubiquitin ligase, is a functional homolog of herpesvirus proteins MIR1 and 2 and has similar activity."J.Biol.Chem.. 278(17). 14657-14668 (2003)
• [文献書誌] Oka, Kiyomasa: "Hepatitis C virus core protein selectively inhibits synthesis and accumulation of p21/Waf1 and certain nuclear proteins."Microbiol.Immunol.. 47(6). 429-438 (2003)
• [文献書誌] Takahashi, Michiaki: "Enhancement of immunity against VZV by giving live varicella vaccine to the elderly assessed by VZV skin test and IAHA, gpELISA antibody assay."Vaccine. 21(25-26). 3845-3853 (2003)
• [文献書誌] Kondo, Kazuhiro: "Recognition of a novel stage of betaherpesvirus latency in human herpesvirus 6."J.Virol.. 77(3). 2258-2264 (2003)