研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、様々な観点からの法医診断への応用が考えられる筋肉内蛋白ミオグロビンに着目しは、死後経過時間推定法に焦点を絞って新しい方法論の開発である。具体的には、体液中ミオグロビン濃度の死後変化、筋肉からのミオグロビンの漏出・拡散、ミオグロビン遺伝子DNAの断片化の3つをパラメーターを採り上げ、また、死後経過時間を超早期から超晩期の6段階に区分し、各時間帯毎に最も適切なパラメータを決定し、最終的には実用的な死後経過時間推定の基準を策定を目指すものである。体液中ミオグロビン濃度の死後変化については、これまでの定量法では、定量値が不正確になる血液試料の存在が新たに判明した。このため、その原因究明と方法の改良の検討を行い、本年度は使用する試薬の精製を進め、平成16年3月現在では、その精製試薬の有用性を検討中である。筋肉からのミオグロビンの漏出・拡散については、甲状腺を試料としてミオグロビン染色条件を確立した。その結果、元より甲状腺に含有されていたと思われるミオグロビンが当初予想より多く、今後は、漏出源が甲状腺であるか骨格筋であるかを区分して検討する必要性があると考えられた。ミオグロビン遺伝子DNAの断片化については、当初計画に先だって予備的検討を行った。即ち、加熱による断片化DNAから、法医実務で汎用されている某塩基配列の増幅を行った。その結果、増幅効率がDNA断片化程度を反映することを示すデータが得られた。