研究課題
本研究は、筋肉内蛋白ミオグロビンを死後経過時間推定の方法論として利用することを目的としている。具体的方法論としては、PCR法による断片化ミオグロビン遺伝子検出、イムノアッセイによるミオグロビンの定量、免疫組織化学によるミオグロビンの染色、という3者である。断片化ミオグロビン遺伝子検出による死後経過時間推定は、マウスを用いた実験的検討を更に進めたところ、マウス死体の保管容器の気密性によってデータがばらついていた可能性が明らかとなった。このため、研究が後戻りすることにはなるが敢えて実験のやり直しを行った結果、増幅産物量は死後の時間経過に従って減少することや、その程度が増幅断片長や死体の保存温度に依存するという基本的傾向や、週単位での死後経過時間推定に適していることに間違いはなかった。しかし具体的に死後経過時間推定に有用なのは、当初予想より短く、死後2カ月程度までと考えられた。イムノアッセイによる体液中ミオグロビン濃度の死後変化については、死後半日程度以内の場合の絞って、実験動物数を増やして検討したが、死後経過時間を具体的に推定するには個体差が甚だ大きく、今後更なる検討が必要と考えられた。ミオグロビンの免疫染色による形態学的検討では、まず、マウスを用いての横紋筋からのミオグロビンの死後漏出・拡散の実験条件を改めて検討した。その上で、横紋筋中のミオグロビンは死後極めて早期から細胞外に漏出し、死後の時間経過に従って諸臓器の主として血管内に証明される傾向が確認されたが、個体差も甚だ大きかった。上記の進捗状況に鑑みて、研究の効率的推進の観点から、次年度はミオグロビン遺伝子DNAの断片化の定量的評価に重点を置くことが望ましいと思われる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
DNA多型 13巻
ページ: 185-188
Rechtsmedizin 15巻4号
ページ: 316