研究概要 |
覚せい剤(MA)が検出された剖検例の死亡前の病態解明を目的として,腎臓の障害の検討を行った.15年度は,MAが検出された22例の腎臓について,免疫組織化学的にミオグロビン,HSP70,c-Fos,TNF-αを観察した.ミオグロビンは16例(73%)で陽性で,陽性症例の血中MA濃度は,陰性症例よりも有意に高かった(p=0.0011).ミオグロビン陽性症例の骨格筋のミオグロビンの染色性は対照群に比し低下していた.従って,死亡直前に骨格筋傷害を生じていたものと考えられた。HSP70は5例(23%)で陽性で,その80%がミオグロビン陽性であった。MAが検出された剖検例における腎臓の障害(HSP70の発現)は,漏出したミオグロビンと関連したものと推定された。16年度は,ラットにMAを単独投与(1群)と繰り返し投与(II群)し,腎臓に及ぼす影響を検討した.免疫組織化学的に8-OH-dG,4-HNE,SOD,ssDNA,nNOS,HSP70,Ubを観察した.血中Cr,BUN,K,Ca,Pおよび血中ミオグロビンとCPKを測定した.第I群では腎尿細管でUbの免疫反応性が亢進し,Crは上昇し,K,Ca,およびPは有意に減少していた(p<0.01).急性変化としての尿細管傷害,腎機能障害が疑われた.また,血中CPKが有意に増加していた(p<0.01)ことから,この尿細管傷害と筋由来のCPKの血中への漏出との関連が示唆された.第II群では,8-OH-dG陽生核数が増加し,8-OH-dG量も有意に増加していた(p<0.01).血中Caは有意に減少していた(p<0.01),MAの反復投与によって腎臓に酸化的DNA損傷が発生し,腎機能障害が生じているものと推測された.
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