エンドスタチンに匹敵するかより強力な血管新生抑制シグナルを惹起する因子を探索する目的で、ヒト成人毛細血管由来を含む4種類の培養血管内皮細胞を血清・増殖因子・血管新生促進因子の存在下で指数関数的増殖状態にし、各種の薬剤や化合物をこれらの培養細胞に添加して4時間後に細胞からRNAを抽出しLightCycler^<TM>による高感度real-time定量的PCR法にてc-myc、c-fos、integrin αv、integrin β3、PECAM-1、focal adhesion kinase遺伝子などの発現量の変化を測定することにより、著明な内皮細胞の内因性遺伝子のdown-regulationをきたす合成ペプチド1種類、および薬剤5種類を選択した。さらにこれらのスクリーニングにて得られた候補因子が、血管新生に必須な内皮細胞遊走抑制作用を有するかどうか、既報のmonolayer wounding protocolにて検討したところ、少なくとも3種類の市販の薬剤において細胞遊走抑制作用を見出した。これらの薬剤が血管内皮細胞増殖抑制作用も有するかどうか、自動粒子計測装置を用いた72時間増殖アッセイ原法を用いて検討したところ、いずれも、エンドスタチンには認められなかった血管内皮細胞増殖抑制作用を示した。血管内皮細胞のアポトーシスを誘導するかどうかについては、現在、検討中である。 以上から、エンドスタチンに匹敵する広範囲な遺伝子発現抑制をきたし、血管内皮細胞遊走抑制作用、ならびに血管内皮細胞増殖抑制作用をきたす薬剤を血管新生抑制候補薬剤として選択することができ、平成16年度の実験動物移植腫瘍における抗腫瘍効果の検討に用いる予定である。
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