研究概要 |
Morris hepatomaをBuffaloラットの腹壁皮下に移植し,移植肝癌における脂質代謝の調節異常を検討した。また同実験モデルを用いて,デヒドロエピアンドロステロンおよびその関連ステロイドの腫瘍増殖抑制効果を検討した。本担癌モデルでは高コレステロール血症を発症し,移植肝癌組織ではコレステロール合成の亢進と胆汁酸合成の低下を認めた。肝癌組織中コレステロールや酸化ステロール濃度が有意に上昇していたにもかかわらず,正常の調節とは異なってコレステロール合成が亢進し,胆汁酸合成が低下している理由を明らかにするため,転写因子SREBP1,SREBP2および核内レセプターFXR, SHPの発現を定量した。その結果,SREBP2の有意な上昇とSHPの有意な低下を認め,コレステロール合成亢進はさらに上位の転写調節メカニズムによって,また胆汁酸合成低下は胆汁酸合成酵素自体の異常によって起こっている可能性が示唆された。さらに癌組織ではLDLレセプターの発現も著明に亢進し,癌はコレステロールを分泌するよりも取り込む方向にレギュレーションされ,癌がコレステロールを分泌していることが高コレステロール血症の原因ではない可能性が示唆された。デヒドロエピアンドロステロンおよびその関連ステロイド(0.01-0.5%)を含む食餌を投与し,投与しない群と2および4週間後に癌のサイズの変化を比較したが,有意な腫瘍増殖抑制は認められなかった。本腫瘍のような増殖能の強い癌の場合には効果が低い可能性,皮下に移植した場合には経口投与したステロイドの組織移行が悪いため効果がなかった可能性,さらに4週間の比較では短かすぎて有意差が得られなかった可能性が考えられた。今後原因を明らかにした後,実験モデルを変えて検討する計画である。
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