研究課題/領域番号 |
15390226
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 和彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (80240703)
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研究分担者 |
藤江 肇 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (90332577)
新谷 良澄 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (80261965)
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キーワード | C型肝炎ウイルス / ミトコンドリア / コア蛋白 / ROS / プロテオミクス / 電子伝達系 / 肝発がん / トランスジェニックマウス |
研究概要 |
慢性C型肝炎における肝発がん機序はまだ不明である。私達は、HCVコア遺伝子トランスジェニックマウス(以下、コアTgM)を用いて肝発がんの機序に迫った。コアTgMにおいては、若齢より脂肪肝が発生し、ヒトC型肝炎における肝がんと同様に、マウスのlife spanの後半において肝がんが発生する。コア蛋白の発現は、肝脂肪化と相まって、肝内におけるROSの発生を増強させて細胞DNA障害を促進する。重要なことに、このROS発生は組織学的な炎症像無しに起こっており、組織学的な炎症が存在しなくてもHCVが存在することで「生化学的な炎症」が存在しうることを示している。 ROS産生の結果、ミトコンドリアDNAの障害がコアTgMで有意に増加しており、コア蛋白による炎症不在下のROS産生は、肝発がんの大きな要因と推定された。ROS産生の機序としては、ミトコンドリア電子伝達系の障害によってNADHの蓄積が起こることが原因と考えられた。 さらに、ミトコンドリアのプロテオーム解析を行った。細胞増殖への関与やミトコンドリアシャペロンとして働くprohibitinのコア蛋白による発現亢進が明らかとなった。また、antioxidantに関わるMnSOD、電子伝達系を担うcomplex III、ATP synthaseなどの発現変化を見出した。 これらの結果より、C型慢性肝炎における肝発がんにおいて、ミトコンドリアの障害が大きな役割を果たしている可能性が高まった。このミトコンドリ障害はHCVのウイルス蛋白によって引き起こされている点が、新しい観点からの肝発がん機序に迫るものとして、極めて重要と考えられる。
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