ヒスタミンH2受容体とガストリン受容体の胃粘膜での役割を検討するために、10週齢の野生型マウス、ヒスタミンH2受容体(H2R)欠損マウス、ガストリン受容体(GR)欠損、ダブル欠損の各マウスの胃粘膜を用い、HE染色、PAS染色、免疫染色を行った。また、酸分泌測定のため、麻酔下で薬剤刺激よる胃酸分泌量、各種薬剤投与下の胃内pHを測定した。 野生型以外では、摂食・絶食に拘わらず血清ガストリン値が上昇した。ダブル欠損マウスの胃粘膜は、GR欠損マウスのそれに酷似し、壁細胞などの下方への増殖成分の減少による萎縮を認めた。しかし、ガストリン欠損マウスでの報告と異なり、表層粘液細胞は野生型と比べ有意に増多した。H2R欠損マウス、ランソプラゾール多量を負荷された野生型マウスと同様、両マウスで小型の壁細胞、頚部粘液細胞の増多を認めた。成熟した主細胞はGR欠損マウスには存在したが、ダブル欠損マウス、H2R欠損マウスでは殆ど認めなかった。ランソプラゾール負荷野生型マウスでは、成熟した主細胞が確認された。ダブル欠損マウスの胃内pHはGR欠損マウスのそれより高く、カルバコールに無反応であった。 現在得られている結論としては 1)GRは、胃粘膜全体の増殖・維持に必要である。 2)ガストリン以外のガストリン遺伝子産物を介するH2R非依存性の表層粘液細胞増多作用がある可能性がある。 3)H2Rは主細胞の分化に必要である。 4)カルバコール刺激胃酸分泌がGRを介する刺激に依存する。 他にも、現在興味深いデータが集積中であり、検討中である。
|