研究概要 |
肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor, HGF)は種々の組織や器官の再生に働く生体修復因子でありその機能は多岐にわたるが、癌細胞の浸潤・転移を促進するという報告がなされており、組織修復にとって有用な細胞増殖、血管新生などの機能のみ有する安全なHGFの開発が望まれる。一方、HGFファミリーであるMacrophage-stimulating protein(MSP)はHGFと同様な機能、つまり生体修復因子であると共に浸潤、転移を促進することが近年明らかにされている。HGFとMSPのクリングルドメイン同士をつないだキメラ蛋白、Metron factor-1(MF1)が強力な細胞増殖作用、器官形成作用をもつが癌細胞の浸潤・転移能を持たない(Michieli P et al. Nature Biotech 2002)ことが示されており、本研究では、肝再生におけるMF1の有効性と安全性を検討し、肝再生不全をはじめとした難治性再生不全疾患への臨床応用への足がかりとする。 (1)Metron Factor-1の機能解析(---in vitroにおける増殖活性・抗アポトーシス活性の確認) 肝細胞初代培養系における細胞増殖能を^3H-thymidine取り込み能で検討した結果、MF-1は対照に比し約2.5倍の増殖活性を持つことが確認された(HGF,3.5倍)。またstaurosporin誘起アポトーシスに対する抗アポトーシス作用はHGFと同等であった。 (2)Mertron Factor-1の肝再生能の解析(---in vivoにおける有効性の確認) Cre ricombinase存在下で発現するMF-1トランスジェニックラットを作成した。遺伝子導入群、対照群で急性四塩化炭素障害モデルを作成し、それぞれで経時的な生存率、肝機能、肝重量、肝増殖マーカー(PCNA, Ki67)、抗アポトーシス作用を現在解析中である。
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