研究概要 |
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、NK細胞マーカーとT細胞受容体(TCR)を併せもつリンパ球で、CD1分子に提示される糖脂質を認識し、自然免疫と獲得免疫を結ぶ重要な細胞である。しかし、C型肝炎ウイルス(HCV)感染や肝癌(HCC)におけるNIT細胞の役割は殆ど解明されていない。我々は昨年度の研究において、C型慢性肝炎(CH)患者末梢血単核球(PBMC)を糖脂質であるαgalactosylse-ramide(αGalCer)とIL-2存在下に培養し、CB患者のNKT細胞の頻度はそのsubsetにより分布が異なるものの、糖脂質に対する反応は良好であり、インターフェロン(IFN)治療によりNKT細胞のIFNγ産生が増加することを示した。また、肝内NKT細胞は、PBMCのそれに比べ有意に高頻度に分布し、肝内での一定の役割が示唆された。 C型CHでは、樹状細胞機能の低下が認められているが、その対策については未解決の状況にある。本年度は先ず健常人PBMCからビーズ法にて採取したCD56+NKT細胞をgranulocyte-macrophagecolo-ny-stimulating factor(GMCSF)と7日間培養することにより、HLA DR+,CD80+,CD86+で樹状細胞様の形態と健常人T細胞とのリンパ球混合培養にて、T細胞の幼若化反応を補助できる細胞が誘導できることが認められた。また、上記糖脂質は、Vα14+NKT細胞を活性化し、樹状細胞の成熟を促進することが知られている。そこで、健常人PBMCよりビーズ法にて得たCD14+細胞(単球)をGMCSF,IL-4存在下に、また同時にCD3+細胞をαGalCer、IL-2存在下にそれぞれ5日間培養後、両細胞を併せ、GMCSF,αGalCerとIL-2を添加、更に2日間培養し、樹状細胞に関連するCD80+,CD86+などの表現型をフローサイトメトリーにて、リンパ球混合培養によるT細胞の幼若化反応の補助能を3Hチミジンの取り込みにより評価した。その結果、従来のGMCSF,IL-4存在下に培養する方法に比べ、本培養法では樹状細胞機能とその表現型が増強することを認めた。まだ予備的な段階であるが、今後C型肝炎や肝癌患者の細胞を用いて、樹状細胞の誘導および機能の増強が得られるか確認したい。にれにより、治療への応用が期待できるものと考えている。
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