研究概要 |
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、NK細胞マーカーとT細胞受容体(TCR)を併せもつリンパ球で、CD1分子に提示される糖脂質を認識し、自然免疫と獲得免疫を結ぶ重要な細胞でsり、多くの免疫調節作用を発揮する。しかし、ウイルス肝炎や肝癌におけるNKT細胞の役割は殆ど解明されていない。 我々は先ずC型慢性肝炎(C-CH)患者の末梢血単核球(PBMC)を糖脂質であるαgalactosylceramide(αGalCer)とIL-2存在下に培養し、CH患者のNKT細胞の頻度はそのsubsetにより分布が異なるものの、糖脂質に対する反応は良好であり、インターフェロン(IFN)治療によりNKT細胞のIFN-γ産生が増加し、Th1優位になることを認めた。肝癌のNKT細胞機能も、そのsubsetにより低下を示した。肝内NKT細胞は、PBMCのそれに比べ高頻度に分布、活性化を認め肝臓での一定の役割が示唆された。 C-CHでは樹状細胞機能の低下が示されているが、その対策については未解決の状況にある。上記糖脂質は、Vα24+NKT細胞を活性化し、樹状細胞の成熟を促進することが知られている。そこで、健常人の末梢血CD14+単球をGMCSF, IL-4存在下に、また同時にCD3+細胞をαGalCerとIL-2存在下にそれぞれ5日間培養後、両細胞を併せ、GMCSF, αGalCer, IL-2を添加、更に2日間培養した。その結果、従来の標準的培養法に比べ、本法では樹状細胞機能とその表現型をより強力に誘導することが分かり、治療への応用が期待された。 次ぎにB型肝炎でのNKT細胞の役割をB型肝炎ウイルス(HBV)特異的細胞障害性T細胞(CTL)誘導の観点から、Balb/cマウス、同じストレインのVα14+NKT knockoutマウスおよびHBVトランスジェニック(Tg)マウスにより検討した。HBV特異的CTLは、HBs抗原免疫に加え、NKT細胞が活性化すると強力に増殖した。さらにHBs抗原に対し免疫学的寛容状態にあるHBV TgマウスにおいてもHBs抗原+αGalCerの免疫によりCTLの誘導が可能であった。CTLレベルでのtolerance breakが可能という意味で重要であり、B型肝炎の治療や発症機序の解明にも寄与するものと考えられた。
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