研究課題
私たちは、骨髄由来前駆細胞が傷害後の血管に定着し、内皮細胞もしくは平滑筋細胞に分化して病変形成に関与することを報告した。骨髄由来細胞の血管病変への関与について、いくつかの方法を用いて再検証してみた。異なる血管傷害モデルを用いての検討:骨髄を置換したマウスの三つの異なる血管に、同時に別々のタイプの血管傷害を加えた。ワイヤー傷害では多くの骨髄細胞が取り込まれていたが、頚動脈の結紮では非常に少なかった。ポリエチレンチューブの大腿動脈周囲への留置では周囲の炎症細胞としては骨髄由来細胞が存在したが、新生内膜には殆ど取り込まれていなかった。一個の造血幹細胞を用いた骨髄置換マウスの解析:骨髄KSL分画(c-kit^+,Sca-1^+,lineage^-)3000個によって骨髄を置換したマウスでは、KSL分画由来細胞が傷害後血管リモデリングに重要な役割を演じていた。一方、KSL分画をさらに精製して1個の造血幹細胞で骨髄置換したマウスを解析すると、移植した細胞の血管リモデリングへの関与は殆ど認められなかった。Parabiosisモデルを用いての検討:Parabiosisモデルにおいて、液性因子ばかりでなく、末梢血、骨髄細胞も二マウス間を交流していた。片方のマウスの血管に傷害を加えると、パートナー由来の細胞が新生内膜形成に関与していた。非照射マウスにおいても、骨髄由来の血中前駆細胞が血管リモデリングに関与することが明らかとなった。末梢血から血管細胞の分離:マウス、ラビット、ヒトの末梢血単核球を培養すると、平滑筋様細胞もしくは内皮様細胞に分化させることができた。高脂血症、加齢によって平滑筋前駆細胞数は増加した。アンジオテンシンIIの持続注入によって血管前駆細胞数は増加し病変進行は加速した。また、動脈瘤形成も認められた。以上より、血液中の前駆細胞が傷害血管のリモデリングに関与する現象が再確認された。生活習慣病治療薬が前駆細胞の動態に影響する可能性が示唆された。
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